ばか》にされてゐた。鼻《はな》が低《ひく》くて眼《め》が細《ほそ》くて、何處《どこ》か間《ま》の拔《ぬ》けた感《かん》じのする平《ひら》べつたい顏《かほ》――その顏《かほ》が長《なが》いので「馬《うま》さん」と言《い》ふ綽名《あだな》がついた。が、中根《なかね》は都會生《とくわいうま》れの兵士達《へいしたち》のやうにズルではなかつた。決《けつ》して不眞面目《ふまじめ》ではなかつた。彼《かれ》は實際《じつさい》まつ正直《しやうぢき》に「天子樣《てんしさま》に御奉公《ごほうこう》する」積《つも》りで軍務《ぐんむ》を勉強《べんきやう》してゐたのである。が、彼《かれ》の生《うま》れつきはどうする事《こと》も出來《でき》なかつた。で、彼《かれ》はムキになればなるだけ教練《けうれん》や武術《ぶじゆつ》に失敗《しつぱい》し、上官達《じやうくわんたち》に叱《しか》りつけられ、戰友達《せんいうたち》にはなぶり物《もの》にされるのだつた。――氣《き》の毒《どく》だな‥‥と、思《おも》ふことが私《わたし》も度々《たび/\》あつた。
「然《しか》し、僕《ぼく》もずゐ分《ぶん》氣《き》を附《つ》けちやあゐたんだ
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