ふん》して、笑《わら》つたり呶鳴《どな》つたり、飛《と》び上《あが》つたりしてはしやいでゐた。大地《だいち》に當《あた》る靴音《くつおと》は生《い》き生《い》きして高《たか》く夜《よる》の空氣《くうき》に反響《はんきやう》した。
「とうとう『馬《うま》さん』やりやあがつた‥‥」と、一人《ひとり》の兵士《へいし》がげらげら笑《わら》ひ出《だ》した。
「選《よ》りに選《よ》つて奴《やつ》が落《お》ちるなんてよつぽど運《うん》が惡《わる》いや‥‥」と、一人《ひとり》はまたそれが自分《じぶん》でなかつた事《こと》を祝福《しゆくふく》するやうに云《い》つた。
「また髭《ひげ》にうんと絞《しぼ》られるぜ‥‥」
「可哀想《かはいさう》になあ‥‥」
中根熊吉《なかねくまきち》の「馬《うま》さん」は二|年兵《ねんへい》の二|等卒《とうそつ》で、中隊《ちうたい》でもノロマとお人好《ひとよ》しとで有名《いうめい》だつた。教練《けうれん》の度毎《たびごと》にヘマをやつて小隊長《せうたいちやう》や分隊長《ぶんたいちやう》に小言《こごと》を云《い》はれ續《つづ》けだつた。戰友達《せんいうたち》にもすつかり馬鹿《
前へ
次へ
全26ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
南部 修太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング