した。そして女なんかに縁のなささうな、忌憚なく云へば、戀の出來るやうな型の男ではなかつたのです。勿論、戀の出來ると云ふことが人間にとつて、それ程重大な事柄ではありますまい。然し、彼が時時私に打ち明けた内心の寂しさや、よそ眼にもそれと知れる心の焦燥は、頭の單純な男だけに、一面は其處にあつたと言はねばなりますまい。何しろ若い generation にとつては、それが心の滿足と、慰藉[#底本では「慰籍」の誤り]の、見方によつては重要な部分になると云ふことは、少くとも確な事實でせうから……。
「面白い話だ……」
と、叫んだのはYです。
「だが、其處でぽつんと糸のやうに切れた處が、極めて意味深長で好い……」
と、にやにや笑ひながら云つたのはMでした。
「意味深長かも知れないさ……然し僕にはこれが生れて初めての、オンリイ一つの戀物語と云へば戀物語だ。若い時の思ひ出にこれを大事にしまつて置くよ。僕はとてももう一生女に惚れられさうな男ぢやあないからね。」
と、S中尉はやがて諦めたやうに云つて、寂しく笑ひました。
面白がつて聞いてゐた三人も私も、ふいと下を向いて口を噤んでしまひました。そして、暫
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