S中尉の話
南部修太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)皆《みんな》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)S中尉|冒險《アバンチウル》の始まり

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、底本のページと行数)
(例)さうした[#底本では「さしうた」と誤り]
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「まあ皆《みんな》、聞いて呉れ給へ。この僕にもこんな話があるから面白いぢやあないか……」
 と、B歩兵聯隊附のS中尉が話し始めたのです。かう云ふと、定めて戰爭の手柄話でも聞かされるのかと、お思ひになるでせう。處が大違ひなんです。この間Mの家で、一昔前《ひとむかしまへ》のA中學校の卒業生だつた我我五人が、久し振りに落ち合つた時の話です。五人と云つても、Mはもう法科大學の四囘生ですし、Yはある商店の番頭でお召ずくめかなんかでをさまつてゐますし、Hは高工を出て或る造船所の技手、それにS中尉と、私だつたのです。勿論五人の間には昔ながらの親しみと、寛《くつろ》ぎとがありました。然し、姿形から云ふともう見違へる程大人びて、腕白な中學時代の面影は殆ど何處
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