》に立っている見物の一人に、おいしいから食べて御覧なさいと言いました。
 途端《とたん》に、空から長い網がするすると落ちて来ました。それが、見ている間《ま》に、するするするすると落ちて来て、忽《たちま》ち爺さんの目の前に山のようになってしまいました。
 すると爺さんが青くなって叫びました。
「さあ、大変だ。孫はどうしたのでございましょう。孫はどうして降りて来るのでございましょう」
 そう言ってる途端に、どしんという音がして何か空から落《おっ》こって来ました。
 それは子供の頭でした。
「わあ、大変だ。孫はきっと天国で梨の実を盗んでるところを庭師に捕《つか》まって、首を斬《き》られたに違いない。ああ、わしはどうして孫をあんな恐ろしい所へ遣《や》ったんだろう。なぜ、皆様方は梨の実が欲しいなどと無理な事を仰《おっ》しゃったのです。可哀《かわい》そうに、わたくしのたった一人の孫は、こんな酷《むご》たらしい姿になってしまいました。ああ、可哀そうに。可哀そうに。」
 爺さんはこう言って、わあわあ泣きながら、子供の首を抱きしめました。
 そうしてる内に、手が両方ばらばらになって落ちて来ました。右の足
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