梨の実
小山内薫
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)六《むっ》つ
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私がまだ六《むっ》つか七《なな》つの時分でした。
或《ある》日、近所の天神《てんじん》さまにお祭があるので、私は乳母《ばあや》をせびって、一緒にそこへ連れて行ってもらいました。
天神様の境内は大層《たいそう》な人出でした。飴屋《あめや》が出ています。つぼ焼屋が出ています。切傷の直《す》ぐ癒《なお》る膏薬《こうやく》を売っている店があります。見世物《みせもの》には猿芝居《さるしばい》、山雀《やまがら》の曲芸、ろくろ首、山男、地獄極楽のからくりなどという、もうこの頃ではたんと見られないものが軒を列《なら》べて出ていました。
私は乳母に手を引かれて、あっちこっちと見て歩く内に、ふと社の裏手の明き地に大勢人が集まっているのを見つけました。
側《そば》へ寄って見ると、そこには小屋掛《こやがけ》もしなければ、日除《ひよけ》もしてないで、唯《ただ》野天《のてん》の平地《ひらち》に親子らしいお爺《じい》さんと男の子が立っていて、それが大勢の見物に取り巻かれているのです。
私は前に大人《お
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