と左の足とが別々に落ちて来ました。最後に子供の胴が、どしんとばかり空から落っこって来ました。
 私はもう初め首の落っこって来た時から、恐《こわ》くて恐くてぶるぶる顫《ふる》えていました。
 大勢の見物もみんな顔色を失《うしな》って、誰《だれ》一人口を利《き》く者がないのです。
 爺さんは泣きながら、手や足や胴中を集めて、それを箱の中へ収《しま》いました。そして、最後に、子供の頭をその中へ入れました。それから、見物の方を向くと、こう言いました。
「これはわたくしのたった一人の孫でございます。わたくしは何処《どこ》へ参るにも、これを連れて歩きましたが、もうきょうからわたくしは一人になってしまいました。
 もうこの商売も廃《や》めでございます。これから孫の葬《ともら》いをして、わたくしは山へでも這入《はい》ってしまいます。お立ち会いの皆々様。孫はあなた方の御注文遊ばした梨の実の為《ため》に命を終えたのでございます。どうぞ葬《ともら》いの費用を多少なりともお恵み下さいまし。」
 これを聞くと、見物の女達は一度にわっと泣き出しました。
 爺さんは両手を前へ出して、見物の一人一人《ひとりびとり》か
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