うま[#「えうま」に傍点]道なんて申しまして、それに当ったところへ寝床を敷きますと、必ず唸されると申しますが」と若党源八は弱い音を吐くのであった。
「馬鹿な。左様な事があるものか」と云って純之進は笑って了った。
あくる日はいよいよ巡検の始まりで、先ず丹那村を庄屋その他の案内で見歩いた。
今は水田となっている元の丹那沼の中からは、時々|神代杉《じんだいすぎ》を掘出すという事から始まって、土中から掘出し物をする話しが土地の者の口から出た。田代の古城跡から武器が出たとか。法輪寺《ほうりんじ》の門前から経筒《きょうづつ》が出たとか。中には天狗《てんぐ》の爪が出たの、人魚の骨が出たのというのもあった。
「江戸で掘出し物は、古道具屋でも、あさらねば得られぬが。こちらでは土中から珍らしい物が出て好いな」
つい純之進は釣り込まれて云った。するとその掘出し物で又軟化させようと、先代が土中から得たという古釜を贈ろうという者さえ出た。純之進は驚いてそれを斥《しりぞ》けた。
畑村の境から茗荷谷《みょうがだに》、多賀谷《たがだに》、それから地蔵前《じぞうまえ》。法輪寺で昼食して、鎮守|八島神社《やしまじ
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