丹那山の怪
江見水蔭

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)東海道《とうかいどう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)本陣|世古六太夫《せころくだゆう》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)なわめ[#「なわめ」に傍点]筋
−−

       一

 東海道《とうかいどう》は三島《みしま》の宿《しゅく》。本陣|世古六太夫《せころくだゆう》の離れ座敷に、今宵の宿を定めたのは、定火消《じょうびけし》御役《おやく》酒井内蔵助《さかいくらのすけ》(五千石)の家臣、織部純之進《おりべじゅんのしん》という若武士《わかざむらい》で、それは酒井家の領地巡検使という役目を初めて承わり、飛地の伊豆《いず》は田方郡《たかたごおり》の諸村を見廻りの初旅というわけで、江戸からは若党一人と中間《ちゅうげん》二人とを供に連れて来たのだが、箱根《はこね》風越《かざこし》の伊豆|相模《さがみ》の国境《くにざかい》まで来ると、早くも領分諸村の庄屋《しょうや》、村役などが、大勢出迎えて、まるで殿様扱いにして了《しま》うのであった。
「出迎えの人数は?」と
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