ご》の足や羽根を毟《むし》ったように鉄製の胴だけが残っている。
 この様子を見ると、折角元気を盛り返しかけた光雄と晴次は又心配気な顔をして、
「こんなに壊れて終ったら、もう地球に帰れなくはありませんかねえ。」
と尋ねる。
 桂田博士も尠《すく》なからず困った様子で何とも答えない。

    六探検者の言語不通

 月野博士は最先に立ってズンズン向うに進むのでほかの人々もその後に続いてやって行く。
 広い石塊《いしころ》の原を横ぎり終ると今度は見上ぐるばかりの険山の連脈だ。
 見渡す限り石ばかりで、四辺には草一本もなく、谷間のような処に下りて行っても、一滴の水さえ流れていない。サハラの大砂漠の最中《まんなか》に投げ出されたようなものだ。それで不思議な事には自分の身体の軽い事といったら踏む足が、地に付いているかいないか訳らないくらい。足音さえしない。それでいくら石塊の上を歩こうとも、険しい山を登ろうとも少しも苦しいと感じない。
「これは面白い。」
と少年は大喜びで、どんどん兎の飛ぶように駆け歩くと、その身体は宛然《まるで》浅草の操人形を見るようにくらくら[#「くらくら」に傍点]して首を振り
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