から一塊の黒い物が現われて、それが段々とこちらへ近づいて来る。
「何でしょう。怪物じゃないかしら、」
「鉄砲を忘れて来ちゃった。どうしよう。」
と二少年はもうそろそろ騒ぎ初める。
「何でもありゃしない。鉄砲を発《う》った処が、こんな処じゃ一寸も利目はありゃしない。あれは多分桂田博士だろう。」
「博士でしょうかしら。」
と、語りながら、少年は尚|怖々《おずおず》と見守っていると、その黒い物は次第に近くよって来る。
 矢張人間だ。
 それが半布《ハンケチ》を振り出した。こちらからもそれに応じて各自にハンケチを振った。
「博士だ※[#感嘆符三つ、36−下−3] 博士だ※[#感嘆符三つ、36−下−3]」

    数万丈の谿谷に博士と再会

 近付くのを見ると、いよいよ博士だ。二少年はバラバラと駆け出してその側によると、桂田博士は微笑しながら、
「どうだ大分元気がいいじゃないか。」
「僕らは愉快で愉快で堪らないんです。」
と筆談をやっている中に月野博士も近づいて握手しながら、
「君が不意に居なくなったものだから、どうしたのかしらと思って大変心配したさ。それで今探しに来た処なんだ。」
「そうかそ
前へ 次へ
全22ページ中17ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
江見 水蔭 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング