。」
と思って晴次は眼を閉じたが、どうも千仭の谷底へ落ちているとは思われない。まるで風船にでも乗って下っているよう。フワフワとして気持のよさったらない。
不思議に思って眼をあけると、不思議※[#感嘆符三つ、35−下−10] 不思議※[#感嘆符三つ、35−下−10] 助手が教えてくれたように、春風に鳥の毛が散っているくらいの速力《はやさ》で、そろそろと下降しているのだ。
「これは面白い。」
と横を見るとほかの連中も莞爾莞爾して同じく気持のよさそうにキョロキョロ四辺を眺めながら降っている。
次第次第に地が見え出すと、下には博士と光雄が笑いながら、三人の飛び降りるのを見上げて待っている。
やがて地に着くと、粉微塵になると思ったのが大違い、花火の風船玉が落ちたくらいに音もせず一同無事にそこに立った。
互にその不思議な現象を笑いながら、なおも人々と進んで行くと、また大きな平原=否《いや》海原に出た。
「ここは何という処ですか。」
と晴次が聞くと、
「ここはツランクイリチー大海の痕だ。」
と博士は手帳に書き示した。
一同は又そこを横切った。
かれこれ半ば頃にも達したと思う頃、遥か岩の影
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