内に忍び込んだ怪しき若者にそのままで有った。もしやその由緒《ゆかり》の者が怨恨《うらみ》を晴らさん為に、附狙うのではあるまいか。そう思うと又してもぞっとして、全身を悪寒をさえ生じたのであった。
 背筋の痒さは一層強く覚え出した。いかに身を悶悩さして、敷蒲団《しきぶとん》に擦付《こすりつ》けても、少しも思うように痒さは癒えぬのであった。
「あッ、もう、どうしようのう」
 思わず知らず、口走った。大名の権威も、女子の謹慎も、共に忘れて了《しま》ったのであった。
「誰《た》そ、早う……あ……もう、絶入《たえい》るばかりじゃ。誰《た》そ来てたもれ」
 常ならば次の間の笹尾が真先に起きて来るものを、疲れ切ってか、眠りから覚めなかった。宿直の侍女もどうしたのか、二人ともそれを聴かぬらしい。こっちへ来ようとはしなかった。
「誰《た》そ、誰そ」
 高田殿の悩みの声。
「はッ、何御用に御座りまするか」
 絹張の丸行燈の下に、両手を突いて頭《かしら》を下げた少女を、高田殿は蚊帳越しに見た。それはどうやら給仕に出た本陣の娘らしく思われたのであった。
「おう、能《よ》う来てくれやった。さッ、早う。その方でも苦
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