怪異黒姫おろし
江見水蔭
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)髭面《ひげづら》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)街道|端《はず》れの
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)蠑※[#「虫+原」、第3水準1−91−60]《いもり》の
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一
熊! 熊! 荒熊。それが人に化けたような乱髪、髯面《ひげづら》、毛むくじゃらの手、扮装《いでたち》は黒紋付の垢染《あかじ》みたのに裁付袴《たっつけばかま》。背中から腋の下へ斜《はす》に、渋段々染の風呂敷包を結び負いにして、朱鞘の大小ぶっ込みの他《ほか》に、鉄扇まで腰に差した。諸国武者修業の豪傑とは誰の眼にも見えるのが、大鼻の頭に汗の珠《たま》を浮べながら、力一杯片膝下に捻伏《ねじふ》せているのは、娘とも見える色白の、十六七の美少年、前髪既に弾け乱れて、地上の緑草《りょくそう》に搦《から》めるのであった。
「御免なされませ。お許し下さりませ」
悲し気にかつは苦し気に、はた唸《うめ》き
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