しゅうない。ここへ来て、毒虫に螫された後の、手当をしてくれやいのう」

       八

 関川の滝之助は急に大|富限者《ぶげんしゃ》と成ったけれど、直ぐその金持|面《づら》をする時は、人から疑われるを知っていた。
 江戸へ出て、とも考えたが、三十六貫目の黄金を、どうして運んで好い事か、それにも迷わずにはいられなかった。
 身体はいくら大きくても、未《ま》だ十四歳。死んだ洞斎老人の遺言通り、徳川の家に仇するには、余りに準備が足りなかった。
 異国へ渡って切支丹《きりしたん》を学び、その魔法で徳川家を呪えという、それも洞斎の遺言であったが、いずれはそうしようとも考えながら、生れ故郷の関川を未だ一歩も出ずにいたのだ。そこへ高田城主の江戸詰と聞き、小さな復讐は放棄せよと、洞斎老人の意見ではあったなれど、いかにしても諦悟《あきらめ》が着かなかった。
 父の牢死、母の悶死、兄の刑死、それを思うと松平家を呪わずにいるのが耐えられぬ苦痛。それに又一方に於て、洞斎老人から伝授された奇薬を遣っての秘法をば、実地に行って見たくてならなかった。
 霧隠れ雲隠れの秘薬、かつてこれは洞斎から真田幸村にも教えて
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