《ふな》饅頭だッけなア」
二
そこへ中間《ちゅうげん》の市助が目笊《めざる》の上に芦の青葉を載せて、急ぎ足で持って来た。ピンピン歩く度に蘆の葉が跳ねていた。
「やア市助どん、御苦労御苦労。何か好い肴が見附かった様だね。蘆の下でピンピン跳ねているのは、なんだろう」と宗匠は立って行った。
「海※[#「魚+喞のつくり」、第3水準1−94−46]《かいず》ですよ。一枚切りですが、滅法威勢が好いので……それから石鰈《いしがれい》が二枚に、舌平目《したびらめ》の小さなのが一枚。車鰕《くるまえび》が二匹、お負けで、二百五十文だてぇますから、三百置いて来たら、喫驚《びっくり》しておりましたよ」
「じゃア丸で只の様なもんだ」
嬶さんは口を出して。
「あれまア、二百で沢山だよ、百文余計で御座いますよ」
「一貫でも、二貫でも、江戸じゃア高いと云われないよ。何しろこのピンピンしているところを、お嬶さんどうにかして貰えないだろうか」
「一寸|家《うち》まで行って、煮て来ましょうで」
「お前の家まで煮に帰ったのじゃア面白く無い。ここで直ぐ料理に掛けるのが即吟《そくぎん》で、点になるのだ。波の
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