悪因縁の怨
江見水蔭
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)天保銭《てんぽうせん》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一寸|家《うち》まで
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)海※[#「魚+喞のつくり」、第3水準1−94−46]《かいず》
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一
天保銭《てんぽうせん》の出来た時代と今と比べると、なんでも大変に相違しているが、地理でも非常に変化している。現代で羽田《はねだ》というと直ぐと稲荷《いなり》を説き、蒲田《かまた》から電車で六七分の間に行かれるけれど、天保時代にはとてもそう行かなかった。
第一、羽田稲荷なんて社《やしろ》は無かった。鈴木新田《すずきしんでん》という土地が開けていなくって、潮の満干のある蘆《あし》の洲《す》に過ぎなかった。
「ええ、羽田へ行って来ました」
「ああ、弁天様《べんてんさま》へ御参詣で」
羽田の弁天と云ったら当時名高いもので、江戸からテクテク歩き、一日掛りでお参りをしたもの。中には
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