で代参致しましょう。厄除けでげす、女難除けが第一で。へへへへ、急いでゆッくり、お参りをして戻りましょう」と宗匠呑込んだとなると、無闇に呑込んで了うのであった。
市助と連立って畑の中を大師の方へと行って了った。今ではこの辺、人目が多い。第一に、工場が建って、岸に添うて人家もあれば、運送船も多く繋《かか》っているが、その頃の寂しさと云ったら無いのであった。それに、川筋も多少違い、蘆荻《ろてき》の繁茂も非常であった。
女船頭のお玉は心配して。
「旦那様、酷《ひど》くお腹《なか》が痛みますなら、冷えると余計悪くなりますので、河原の石でも焼いて、間に合せの温石《おんじゃく》でもお当てなさいますか」と親切は面《おもて》に現われた。
「いや、それ程でも無い。少しここで休んでいたら、納まりそうだが、帆を下して了ったので、日避けが無くなった。どこか日蔭へ船を廻して貰いたいな」
「それでは、中洲の蘆の間が好う御座います。洲の中には船路《ふなみち》が掘込んで御座いますから、ズッと中まで入れますで」
「だと、人も船も蘆の間に隠れて了うのだね」
「左様で御座いますよ」
「それは好い隠家《かくれが》だ。早速そ
前へ
次へ
全33ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
江見 水蔭 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング