げ》のはえた女友達とつきあっていた女です。妾がアングロ・サクソンの諾威《ノルウエー》人によって子宮炎を起し、チュトン族の独逸《ドイツ》人によって戦術を会得し、ケント族のフランス人から無意味で得体のしれぬラブ・レタと嬉しがらせの骨《こつ》を覚え、歓喜の最中夢中独待の下品な言葉をもらすアングロサクソン種の和蘭《オランダ》人、オットマン帝国の土耳古《トルコ》人からは古代のシステムの掟を、アイオニア民族の希臘《ギリシャ》人からは商売の極意を教わりました。それが貴方とふとしたことからトア・ズン・ドルで背中合せになってから、私は貴方が矮小《わいしょう》でこざかしい日本人であることを知りながら貴方が慕わしくてならないのです。妾にとってY、貴方がエトナ火山の熱気よりも、モンテ・クリスト島の神秘さにもまして深い誘惑となるのです。妾のことをメッシナ海峡などと思わないでください。
――私はまた、浮気な貴女を愛することは禁断道路を歩むよりも一層困難に思うのです。
――妾が不可《いけ》なかったのです。妾が色気狂いのような真似さえしなかったならば!
――アダ、私は貴女が容易《たやす》く身を委すたびに飛行機の
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