達を案内しました。王国の賛沢な偕調《メロデー》が部屋を満たして、アングロサクソンの英諾威《えいノルウエー》人、ケント族の仏伊人、スラブの露墺《ろおう》人、アイオニアンの血族|希臘《ギリシア》人、オットマン帝国の土耳古《トルコ》人等に交って、東洋の黄色な悲劇的な顔が七分の運と三分の運命に対する己惚《うぬぼ》れをもって、千金を夢みているのです。併し、モナコに於て、零落《れいらく》したフランス貴族の復辟《ふくへき》の夢も破れてしまったのです。イスタンブールで恋人はその身を果敢《はか》なんで、死んでしまったのです。ミニオンの伊太利《イタリー》人は、路傍楽《ろぼうがく》人にならねばならぬのです。隣室からルーレットの玉の転げる音が、悪魔の囁きのように妾の耳に響いて来ました。妾達はそれに誘われるもののように立上ると、隣室の賭博場へ這入って行きました。そこでは黒百合のような貴婦人が、オペラバッグから紙幣束《さつたば》を出して、百|法《フラン》の青札を買い、二十歳にもならないしとやかな娘が、赤札に自分の運命を賭けているのです。ロダンさんは妾に数枚の赤札を買って下さいましたが、みるみるルーレット係の役人の
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