を愛する。貴女によって、わしはわしの生命の影を作りたいと思うのだ!」
モナコの悲劇
ジョージ・佐野に、妾の内部的な魂の推移は分かる筈はなかったのです。それから妾はオテ・ド[#「オテ・ド」はママ]・※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ロンに通うことを、妾の一生の価値ある仕事として、云いしれぬ喜びを持つようになりました。
いまや妾は、理智的な女性だったのです。併し、妾の理智は、ロダンさんの芸術の中に移り棲んだのです。こうしたデリケエトな女の心が、大陸生れの佐野に感じることは不可能です。彼は魂の脱穀《だっこく》となった妾の身体《からだ》を抱いて、捕えがたい悪夢に陥って行きました。
彼は妾の沈黙の裡《うち》に、悪い幻影を掬《すく》って、それを追求したのです。そのうち妾達の曲芸団は再び旅興行へ出ることになって、妾達がモンテ・カルロに出発する前日、妾はペル・※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ュウ村のロダンさんの、お家に招かれました。その間、幾個《いくつ》かの花子の首の試作品がオテル・ド・※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ロンのアトリエに出来つつあったのでした。
ロダ
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