な唯物主義者ではない。それに進化論はただ物質的方面の進化のみをもって満足すべきではない。精神的進化という方面を考えなければならぬ。どうも多くの進化論者は、自然科学的の進化論をもって満足して、とかく物質主義に傾向するけれど、それには自分はあきたらない感じを抱いて、どうしても哲学的方面から見た精神的進化主義をとるでなければ、はなはだ偏した不完全な進化論となるという考えであった。それで流行の唯物主義、機械主義、功利主義等に反対して、絶えず理想主義の側に立ってたたかってきた次第である。
二 現象即実在論
哲学の側においてはつとに「現象即実在論」を唱道して、しばしばこれを『哲学雑誌』において論じたのである。実在論の種類は古来いろいろあるけれども、そのようなことはしばらくおいて、本体としての実在に関する見解は、だいたい三段階を経て進んできているのである。第一の段階は一元的表面的の実在論と名づけたならばよかろうと思う。これは現象そのものをそのまま実在と見る立場であって、素朴的実在論はこれに属するのである。これは実在論としてもっとも低級な立場であって、これをもって満足し得らるるものでないか
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