明治哲学界の回顧
結論――自分の立場
井上哲次郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)元良《もとら》勇次郎は
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)捉え[#「捉え」は底本では「促え」]得らるべきでなくして
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一 理想主義者として
つぎに、明治年間における自分の立場について、少しく話してみようと思うのであるが、だいたい自分は理想主義の側に立って絶えず唯物主義、功利主義、機械主義等の主張者とたたかってきたのである。もっとも激しくたたかった相手は加藤弘之博士であった。元良《もとら》勇次郎は友人ではあったけれど、学説においてはしばしば衝突をきたしたのである。自分は明治十四年のはじめに、大学において「倫理の大本」という題で、倫理に関する見解を発表いたし、ついでそれを一部の書として、『倫理新説』と題し、明治十六年に発行したのである。自分の倫理学上の理想主義はすでにその書に端緒を開いているはずである。自分は明治十三年に大学を卒業したのであるから、卒業後一年を経ない内に「倫理の大本」について自分の見るところを発表した次第である。それか
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