なわち精神的発展を遂げる本能が人間にそなわっている。ところが人間には知情意という三方面の精神作用があるがために、その知的方面が発展してきたところに、あらゆる学術が興っている次第である。自然科学、哲学、すべての学術である。学術は真理をあきらかにすることを目的としている。理想は真理の全体を闡明《せんめい》することである。情の満足は美の全体を表わすことで、至美すなわち絶対美に到達するにあらざればとうてい満足することはできない。そこに芸術が起っている。芸術の目的は美の理想を実現するにある。意は善の実行をもって目的とするので、したがって道徳的行為の関するところで、最高善または至善というのが、その終極の目的である。知情意三方面とも、いずれも理想、目的がある。知は真をもって理想とし、情は美をもって理想とし、意は善をもって理想としている。しかし真善美の理想は終極するところ一つの理想すなわち人生終極の理想で Sollen の因って生ずるところである。この究竟の目的たる大理想は、実在を説明原理として見ないでこれを前途に擲《な》げ出して人間行動の標的としたときに、構成されるので、彼と此とは畢竟一つのものと見
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