三 人生哲学
つぎに人生哲学の方面より考察してくると、こういうことになる。進化論者の側においては、二つの根本欲を立てて説明してくるのである。その二つの根本欲は生存欲と生殖欲とである。これは動植物を通じて応用せらるるのである。もとより人間もこの範囲を出でないものとして説明されているが、この点において自分はちがった考えを持っている。この点においては進化論の側からは人間の人間たる所以が説明されていない。すなわち人間の他動物と異っている特色をあきらかにすることができていない。かかる進化論者の学説がよほど広く学界に影響して、そして物質主義、功利主義、機械主義、本能主義というような主張となっていると考える。自分はどうしてもモー一つこれとちがった根本欲があるものとしなければならないと思う。それで生存欲と生殖欲はこれを自然欲(Naturtrieb)と名づけて、それ以外に智能欲(intellektueller Trieb)というものを、一つの根本欲として立てなければならぬ。これは自然欲に対する精神欲である。この精神欲を暫く知能欲と名づくるのであるが、それはまた発展欲もしくは完成欲と名づけてもよい。す
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