模様を作る。この場合は前の多くの場合とは反対に枝の末端のほうから樹幹のほうへ事がらが進行するので、この点でも地上の斜面に発達する河流の樹枝状系統によく似ている。
これらの現象を通じて言われることは、普通の古典的な理論的考察からすれば、およそ一様に均等に連続的にあるいは対称的に起こるであろうと考えらるるものが、実際には不均等に非対称的に不連続的にしかも統計的に起こるのである。このような場合を適当に処理すべき理論はもちろんのこと、その理論の構成に基礎となるべき概念すらもまだ全然発達していないのであるから、今のところでは物理学者はこれらをどうしてよいかわからない。従って問題にしようともしなければ、また見ても見ないつもりで目をつぶって通り過ぎるのが通例である。
上記のごとき現象が純粋な自然探究者にとって決して興味がなくはないのであっても、それが現在の学問の既成体系の網に引っかからない限りは、それが一般学者から閑却されるのもまた自然の成りゆきであったと思われる。ところが、最近に至って物理学の理論の基礎に著しい革命の起こった結果として、物理現象の決定性といったような基礎観念にもまた若干の改革が
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