ゃう》りの女の子。牡丹燈籠《ぼたんどうろう》とかの活人形《いきにんぎょう》はその脇にあり。酒中花《しゅちゅうか》欠皿《かけざら》に開いて赤けれども買う人もなくて爺が煙管《きせる》しきりに煙を吐く。蓄音機今|音羽屋《おとわや》の弁天小僧にして向いの壮士腕をまくって耶蘇教《やそきょう》を攻撃するあり。曲書きのおじさん大黒天の耳を書く所。砂書きの御婆さん「へー有難う、もうソチラの方は御済《おすみ》になりましたかなー、もうありませんかなー。」へー有難うこれから当世白狐伝を御覧に入れる所なり。魔除《まよけ》鼠除けの呪文、さては唐竹割《からたけわり》の術より小よりで箸を切る伝まで十銭のところ三銭までに勉強して教える男の武者修行めきたるなど。ちと人が悪いようなれども一切|只《ただ》にて拝見したる報いは覿面《てきめん》、腹にわかに痛み出して一歩もあゆみ難くなれり。近きベンチへ腰をかけて観音様を祈り奉る俄信心《にわかしんじん》を起すも霊験《れいげん》のある筈なしと顔をしかめながら雷門《かみなりもん》を出《い》づれば仁王の顔いつもよりは苦《にが》し。仲見世《なかみせ》の雑鬧《ざっとう》は云わずもあるべし。
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