との喜びは、大小の差はあっても質は同じようなものらしい。子供等もこの発見にひどく興味を感じて、帰路にもう一遍よく見定めようということに衆議一決した。
国府津《こうづ》と小田原の中間に「雀の宮」という駅があったようだと子供達と話していたら、国府津駅の掲示板を見ていた子供の一人からそれは「鴨の宮」だという正誤を申込まれた。その子供の話によると、「ワシントン」という靴屋を間違えて「ナポレオン」と云った友達がいるそうである。しかし雀と鴨では少し大きさが違い過ぎると云って笑った。雀の宮は日光の近くにあったのである。
小田原ではバスが待っていたが、箱根町行は満員なので空席のあった小涌谷行に乗込んだ。湯本までの道路は立派なドライヴウェーである。小田原征伐当時の秀吉に見せてやりたかったという気もした。塔《とう》の沢《さわ》あたりからはぽつぽつ桜が見え出した。山桜もあるが、東京辺のとは少し違った種類の桜もあるらしい。関東地震や北伊豆地震のときに崩れ損じたらしい創痕《きずあと》が到る処の山腹に今でもまだ生ま生ましく残っていて何となく痛々しい。
宮《みや》の下《した》で下りて少時《しばらく》待っている
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