ケウ」すなわち顎[#「顎」に傍点]であろう。能登がアイヌの「ノト」頤《おとがい》である事は多くの人が信じている。
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坪井博士の説ではトサはやはりチャム系の言葉で雨嵐[#「雨嵐」に傍点]の国だそうである。これだとあまり有難くない国である。
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高知 これは従来の説では、河内《こうち》すなわちデルタだそうである。坪井博士の説ではチャム語で島[#「島」に傍点]である。しかしアイヌだと「コッチ」「コーチ」宅地[#「宅地」に傍点]となる。これはまたマレイの「コータ」堡塁[#「堡塁」に傍点]とのある関係を思わせる。
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 以上は大部分ただ偶然の暗号に過ぎないかもしれない。しかし中には実際ある関係をもつものもあるかもしれない。関係があるとしても、それがどういう関係であるかは分らない。実際アイヌの先祖の言葉であるのか、また我々の先祖の言葉が今のアイヌの言語に混入しているのか、あるいは朝鮮、支那、前インド、南洋から後に渡来したのがアイヌの先祖と吾等の先祖の言語に混合しているのかそれはなかなか容易
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