てくれたおかげで、平均よりは nb だけ少ない人数を収容すればよいことになる。もしこの丙電車が規定よりc時間遅れたとしても、乙が遅れなかった場合よりはやはり nb だけ過剰収容数が減るわけである。もし丙が規定よりcだけ早ければ、この電車は n(b+c) だけ少ない人数を収容しただけで発車ができる。この結果はどうなるか。これは明らかに乙丙電車の間隔を次第次第に減少し、従って乙の混雑と丙の空虚をますます著しくする事に帰着して行くのである。
 長い線路の上にはじめ等間隔に配列された電車が、運転につれて間隔に不同を生じる。そうして遅れるものと進むものとが統計上三または四の平均週期で現われるとすると、若干時の後に実現される運転状況は、私がこの編の初めに記述したとだいたい同じようになるわけである。すなわち三四台の週期で、著しい満員車が繰り返され、それに次ぐ二三台はこれに踵《くびす》を接して、だんだんに空席の多いものになる。そうして再び長い間隔を置いて、また同じ事が繰り返されるのである。
 以上は、事がらをできるだけ簡単に抽象して得られた理論上の結果である。実際上は、以上のほかになお合わせ考えるべき
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