幾多の因子の多数にある事はもちろんである。しかし以上の考察はこれら因子中の最も重要なるものに関したもので、これからの結論がだいたいにおいて事実とあまりに懸隔したものではないという事も許容されるだろうと信じる。
 私はこのような考えを正す目的で、時々|最寄《もよ》りの停留所に立って、懐中時計を手にしては、そこを通過する電車のトランシットを測ってみた。その一例として去る六月十九日の晩、神保町《じんぼうちょう》の停留所近くで八時ごろから数十分間|巣鴨《すがも》三田《みた》間を往復する電車について行なった観測の結果を次に掲げてみよう。表中の時刻は、同停留所から南へ一町ぐらいの一定点を通過する時を読んだものである。時間の下に付した符号は乗客の多少を示すもので、これはほんの見当だけのものである。○はいわゆる普通の満員、△は座席はほぼ満員だがつり皮は大部分すいている程度、×は空席の多いいわゆるガラアキのものである。◎は極端な満員、××は二三人ぐらいしかいないものを示す。
[#ここに表組入る、別ファイル(densyanokonzatsu_table.txt)参照]
 この表で見ると、たとえば五分ごとに
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