などにあるからまっ黒くさびてしまっている。それをみがいて継ぎ直したらいくらかよくなったが、またすぐにいけなくなる。だんだんに吟味してみると電鈴自身のこしらえ方がどうしてもほんとうでないらしい。ほんとうなら白金か何か酸化しない金属を付けておくべき接触点がニッケルぐらいでできているので、少し火花が出るとすぐに電気を通さなくなるらしい。時々そこをゴリゴリすり合わせるとうまく鳴るが、毎日忘れずにそれをやるのはやっかいである。これはいったいコイルの巻き数や銅線の大きさなどが全くいいかげんにできていて、むやみに強い電流が流れるからと思われる。それだからちょっとやってみる試験には通過しても、長い使用には堪えないように初めからできている。それを二年も三年も使おうというほうが無理だということがわかった。そしてずいぶん不愉快な気がした。こういうものが平気に市場に出ていて、だれでもがそれを甘んじて使っているかと思うのが不愉快であった。しかしまさかこんなにせ物ばかりもあるまいと思って、試みに銀座《ぎんざ》のある信用ある店でよく聞きただした上で買って来たのを付け換えたら、今度はまずいいようである。ついでに導線の
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