断水の日
寺田寅彦
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)頻繁《ひんぱん》に
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)多少|亀裂《きれつ》でもはいって
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)適当になます[#「なます」に傍点]とか
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十二月八日の晩にかなり強い地震があった。それは私が東京に住まうようになって以来覚えないくらい強いものであった。振動週期の短い主要動の始めの部分に次いでやって来る緩慢な波動が明らかにからだに感ぜられるのでも、この地震があまり小さなものではないと思われた。このくらいのならあとから来る余震が相当に頻繁《ひんぱん》に感じられるだろうと思っていると、はたしてかなり鮮明なのが相次いでやって来た。
山の手の、地盤の固いこのへんの平家でこれくらいだから、神田《かんだ》へんの地盤の弱い所では壁がこぼれるくらいの所はあったかもしれないというような事を話しながら寝てしまった。
翌朝の新聞で見ると実際下町ではひさしの瓦《かわら》が落ちた家もあったくらいでまず明治二十八年来の地震だという事であった。そしてその日
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