《とびら》のわきに「宝蔵見物のかたはここで番人をお待ちくだされたし」という張り札がしてある。その前で坊さんが二人立ち話をしている。
 門を出ると外はからっ風が吹きあれていました。堂の前を右へ回ると塔へ上る階段がある。
 薄暗い螺旋形《らせんけい》の狭い階段を上って行く。壁には一面のらく書きがしてある。たいてい見物人の名前らしい。登りつめて中段の回廊へ出る。少し霧がかかってはいるが、サンデニからボアのほうまでも見渡される。鐘楼の下の扉《とびら》が開いて女が顔を出した。そして塔へ上りますかといって塔の入り口の扉を開く。
「おりて来たらここをたたいてください」といって、ドンドン扉をたたいて見せて、私を塔の中へ閉じこめてしまった。まっ暗な階段を手探りながら登って行って頂上に出る。ひどい風で帽子は着ていられぬ。帽子を脱ぐと髪の毛を吹き乱す。やっとベデカの図を開いてパリじゅうを見おろす。塔の頂の洗いさらされた石材には貝がらの化石が一面についている。寺の歴史やパリの歴史もおもしろいが、この太古の貝がらの歴史も私にはおもしろい。屋根のトタンにも石にも一面に名前や日付が刻みつけてあります。塔をおりて扉《
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