1[#「1」は小書き]Y1[#「1」は小書き]X2[#「2」は小書き]Y2[#「2」は小書き]X3[#「3」は小書き]Y3[#「3」は小書き]……によって組み立てられた多次元の世界であるとも言われる。
それは、三次元の世界に住するわれらの思惟《しい》を超越した複雑な世界である。
「独吟」というものの成効《せいこう》し難いゆえんはこれで理解されるように思う。
また「連句」の妙趣がわれわれの「言葉」で現わされ難いゆえんもここにある。[#地から1字上げ](昭和二年五月、渋柿)
[#改ページ]
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ラジオの放送のおかげで、始めて安来節《やすぎぶし》や八木節《やぎぶし》などというものを聞く機会を得た。
にぎやかな中に暗い絶望的な悲しみを含んだものである。
自分は、なんとなく、霜夜の街頭のカンテラの灯《ひ》を聯想《れんそう》する。
しかし、なんと言っても、これらの民謡は、日本の土の底から聞こえて来るわれわれの祖先の声である。
謡《うた》う人の姿を見ないで、拡声器の中から響く声だけを聞く事によって、そういう感じがかえって切実になるようである。
われわれは、結局やはり
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