たので、鉄軌《レール》がそれに映じて金色の蛇のように輝き、もう暗くなりかけた地面に、くっきり二条の並行線を劃《かく》していた。
汽車の進むにつれて、おりおり線路のカーヴにかかる。
カーヴとカーヴとの間はまっすぐな直線である。
それが、多くは踏切の所から突然曲がり始める。
ほとんど一様な曲率で曲がって行っては、また突然直線に移る。
なるほど、こうするのが工事の上からは最も便利であろうと思って見ていた。
しかし、少なくもその時の私には、この、曲線と直線との継ぎはぎの鉄路が、なんとなく不自然で、ぎごちなく、また不安な感じを与えるのであった。
そうして、鉄道に沿うた、昔のままの街道の、いかにも自然な、美しく優雅な曲線を、またなつかしいもののように思ってながめるのであった。[#地から1字上げ](大正十三年一月、渋柿)
[#改ページ]
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震災後、久しぶりで銀座を歩いてみた。
いつのまにかバラックが軒を並べて、歳暮の店飾りをしている。
東側の人道には、以前のようにいろいろの露店が並び、西側にはやはり、新年用の盆栽を並べた葭簀張《よしずば》りも出ている。
歩き
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