りちがった着物をきて現われているのもある。しかし、重複を避けるためにこれを取り除くとすると、この集の内容の自然な推移の連鎖を勝手に中断することになって、従って一つの忠実な記録としてのこの集の意味を成さぬことになるから、やはり、そういうのもかまわず残らず採録して、実際の年月順に並べることにした。
中には、ほんの二、三ではあるが、「無題」「曙町より」とは別の欄に載せた短文や書信がある。これも実質的には全く同じものであるから、他のものといっしょにして年月の順に挿入することにした。
大正十三年ごろの「無題」に、ページの空白を埋めるために自画のカットを入れたのがある。その中の数葉を選んでこの集の景物とする。これも大正のジャーナリズムの世界の片すみに起こった、ささやかな一つの現象の記録というほかには意味はない。
この書の読者への著者の願いは、なるべく心の忙《せわ》しくない、ゆっくりした余裕のある時に、一節ずつ間をおいて読んでもらいたいという事である。[#地から1字上げ](昭和八年六月、『柿の種』)
[#改丁、ページの左右中央に]
短章 その一
[#改ページ、ページの左右中央に]
[
前へ
次へ
全160ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
寺田 寅彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング