聞記事を読んだとき私は子供の時分に見た「ガラスを食う山男」の見世物のことを思い出した。
 高知の本町《ほんまち》に堀詰座《ほりづめざ》という劇場があった。そこの木戸口の内側に小さな蓆囲《むしろがこ》いの小屋をこしらえて、その中にわずかな木戸銭で入り込んだせいぜい十人かそこいらの見物のためにこの超人的演技を見せていたいわゆる山男というのはまだ三十にもならないくらいの小柄な赭《あか》ら顔《がお》の男であったが、白木綿の鉢巻でまっ黒に伸びた頭髪を箒《ほうき》のように縛り上げて、よれよれの縞《しま》の着物とたっつけ袴《ばかま》に草鞋《わらじ》がけといういでたちで、それにまっかな木綿の扱帯《しごき》のようなもので襷《たすき》がけをした、実に悲しくも滑稽《こっけい》にして颯爽《さっそう》たる風※[#「三の真ん中にたてぼう」、第3水準1−14−6]《ふうぼう》は今でも記憶に新たである。
 なんでも蛇をかじって見せたり、うさぎの毛皮の一片を食いちぎって見せたりした。それからおしまいには大きなランプのホヤのこわれたのを取り出して、どんどんじゃんじゃんという物すごい囃子《はやし》に合わせてそれを見物の前に
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