つけるような編集法はないものかと思われた。たとえば城代《じょうだい》の顔と二三の同志の顔のクローズアップ、それに第一のクライマックスに使われた「柱に突きささった刀」でもフラッシュバックさせるとか、なんとかもう一くふうあってもよさそうに思われた。
滅びた主家の家臣らが思い思いに離散して行く感傷的な終末に「荒城の月」の伴奏を入れたのは大衆向きで結構であるが、城郭や帆船のカットバックが少しくど過ぎてかえって効果をそぐ恐れがありはしないか。自分がいつも繰り返して言うようにもし映画製作者に多少でも俳諧《はいかい》連句《れんく》の素養があらば、こういうところでいくらでも効果的な材料の使い方があるであろうと思われるのである。
早打ちの使者の道中を見せる一連の編集でも連句的手法を借りて来ればどんなにでも暗示的なおもしろみを出すことができたであろうと想像される。そういうことにかけてはおそらく日本人がいちばん長じているはずだと思われるのに、その長所を利用しないのが返す返すも残念なことである。
五 イワン
ドブジェンコのこの映画にも前の「大地」と同様な静的な画面をつないで行く手法が目につ
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