やっぱり何かしらひと花咲かせてみないと充分にその存在がはっきりしない、あれと同じだというような気がするのである。
 去年の七月にはあんなにたくさんに池のまわりに遊んでいた鶺鴒《せきれい》がことしの七月はさっぱり見えない。そのかわりに去年はたった一匹しかいなかったあひるがことしは十三羽に増殖している。鴨《かも》のような羽色をしたひとつがいのほかに、純白の雌《めす》が一羽、それからその「白」の孵化《ふか》したひなが十羽である。ひなは七月に行った時はまだ黄色い綿で作ったおもちゃのような格好で、羽根などもほんの琴の爪《つめ》ぐらいの大きさの、言わば形ばかりのものであった。それでも時々延び上がって一人前らしく羽ばたきのまね事をするのが妙であった。麦笛を吹くような声でピーピーと鳴き立ててはベランダの前へ寄って来て、飯の余りやせんべいの欠けらをねだるのである。それからまた池にはいったと思うとせわしなく水中にもぐり込んでは底の泥《どろ》をくちばしでせせり歩く。その水中を泳ぐ格好がなかなか滑稽《こっけい》で愛敬《あいきょう》があり到底水上では見られぬ異形の小妖精《しょうようせい》の姿である。鳥の先祖は爬
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