虫《はちゅう》だそうであるが、なるほどどこか鰐《わに》などの水中を泳ぐ姿に似たところがあるようである。もっとも親鳥がこんな格好をして水中を泳ぎ回ることは、かつて見たことがない。この点ではかえって子供のほうが親よりも多芸であり有能であるとも言われる。親鳥だと、単にちょっと逆立《さかだ》ちをしてしっぽを天に朝《ちょう》しさえすればくちばしが自然に池底に届くのであるが、ひな鳥はこうして全身を没してもぐらないと目的を達しないから、その自然の要求からこうした芸当をするのであろうが、それにしても、水中にもぐっている時間を測ってみるとやはりひな鳥のほうが著しく長い、大概七秒か八秒ほどの間もぐって水底を泳ぎ回っているのに、親鳥のほうはせいぜい三四秒ぐらいでもう頭を上げる。これはたしかにひなと親鳥とではその生理的機能にそれだけの差があることを意味するのではないかと思われる。
鴨羽《かもは》の雌雄夫婦はおしどり式にいつも互いに一メートル以内ぐらいの間隔を保って遊弋《ゆうよく》している。一方ではまた白の母鳥と十羽のひなとが別の一群を形づくって移動している。そうしてこの二群の間には常に若干の「尊敬の間隔」が
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