そして或者は、打たれさへもした。その報告は役人仲間に大きな擾乱《じょうらん》を起す原因になつた。
 特別の調査が命ぜられたが、勿論それはアメリカでの同じやうな調査のやうに誤魔化しに終つた。青年共産党の委員会は『大げさ』な事を云ふと云つて叱られた。そんな話は反革命の作り話だと云つて、プラウダの論文は載せない事にきまつた。

     六

 私はその事で或る共産主義者と議論した。どうしてこんな事がソヴイエツト・ロシアに起るのか? 私は『信頼すべき、そして能力ある働き手の欠乏だ』と云ふ型にはまつた答を受け取つた。で、『私は道徳的不具者』のやうに烙印を押された不運な子供達の中で仕事をする事を提議した。
『同志リリナにお会ひなさい』と私は忠告された。『彼女はきつとあなたを喜ばすでしよう。』
 数日の後同志リリナを訪ねた。彼女はむづかしい顔をした虚弱な女で典型的な五十年以前のニユウ・イングランドの女教師だつた。私は彼女が最も立派な心理学と教授学との法式をよくのみ込んで居り、それに親しんで来た人だと云ふ事を確かめた。私はかまはず、子供の道徳的堕落の理論の信じられない事、そしてそんな時代後れの見解に
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