とか云はれて隔離されてゐると聞いた時に、私はひどく驚いたと。其の時私はそれをホテル・ド・ルウロオプで掛りの医者の態度と其の旧式な考へとに帰した。然るにプラウダ紙上の一論説と、私がマキシム・ゴルキイ、マダム・リリナや、其他の多くの共産主義の首領とした話で、彼等の殆どすべてが、『先天性の道徳的堕落』と云ふ事を信じてゐる事が分つた。
 或る高い位置にゐる児童教育者でさへ、かうした『道徳的不具者』のために牢獄を設けると云ふ事に賛成してゐる。が、これは教育委員ルナチヤルスキイや、ゴルキイや、其の他の、正統派共産主義者からはセンテイメンタリストと看做《みな》されてゐる進歩的分子の人にとつては、あんまりひどい事だつた。ルナチヤルスキイは此の野蛮な提議と戦つて、幸に彼の方が勝つた。が、猶、一九二一年の終りにさへも、モスコオのタガンカ監獄には、二百人の少年がゐて其の中には八つになる子供がゐた。
 ルナチヤルスキイもゴルキイもそれを知らないのだと云ふ事は確かだ。しかも此の知らないと云ふ事の中に悪事があるのだ。大勢の下役達がしてゐる事を上役の者が知る事が出来ないやうに出来てゐるのだ。タガンカ監獄にゐる子供達
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