生者とし、絶対の従属者とする。結婚は生の闘争に対して婦人を無能にし、彼女の社会的意識を根絶し、彼女の想像力を麻痺し、而して後その恩恵的保護を科する、それは真に人間品性に対する係蹄《けいてい》であり、モヂリ詩文である。
 若し母たることが女性の最高の完成であるなら、恋愛と自由以外に如何なる保護を必要とするであらう? 結婚は単に彼女の完成を蹂躙し、腐敗せしめる。結婚は婦人に対し『おまへが私について来る時にのみおまへは生命を産み出すであらう』と云はないであらうか? 若し彼女が母権を買ふに彼女自身を売ることを拒むなら、結婚は彼女を貶しめ、辱しめないだらうか? 結婚はたとへ彼女が憎悪と強迫によつて受胎することがあつても母権を裁可しないであらうか? 然るに、若し母たることが自由撰択であり、恋愛と、大歓喜と熾烈な情熱の結果であるなら、結婚は無辜《むこ》の頭上に荊※[#「くさかんむり/刺」、第3水準1−90−91]《けいきょく》の冠を置き、血文字にて私生児てふ恐るべき言葉を彫《きざ》まないであらうか? 若し結婚がその宣言するあらゆる諸徳を含んでゐるなら、母たることに反する罪悪は結婚を永久に愛の領土から
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