が、到頭あたしの一生を圧しつぶしてしまったのさ。つまり、刺青にものを云わせて生きて行く生活しか、あたしに残らなかったのさ」
 兵古帯のお加代の眼はまたうるみ、声もうるんだが、あわてて自嘲的な笑い声を立てて、
「――あら、随分喋っちゃったわね。あんた聴いてた。聴えなかったの。可哀想に……。でもね、聴えないからこんな愚痴を喋ったのよ」
「…………」
「さア、来たわよ」
 あたりが急にぱっと明るくなり、やがてハナヤの店先だった。
「豹吉は昼間靴みがきの子を連れて来たっけ。こんな風に……」
 と、想い出しながら、中へはいりかけた時、お加代ははっとした。
 入口に蛇の絵を描いた紙片が落してあったのだ。
 蛇の絵の紙片が落してあれば……青蛇団の仲間に告げる――。
「危機!」
 の暗号なのだ。

 その頃――。
 もっと正確に云えば、ガマンの針助が兵古帯のお加代と別れて、鴈治郎横丁から出て行った頃――。
 次郎と三郎は豹吉を追いくたびれて、というより、豹吉の姿を見失って、難波の闇市の食堂の軒先にある職場へ戻って来た。
「なんぜ待ってくれへんかったんやろなア」
「逃げんでもええのになア」
「なんぜ逃げ
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