と、くどくどといいきかせるようにいった。
「う、う、う……」
 娘はただ奇声を発しただけだった。
「あはは……。そやった。言うても聴えんのやったな」
 と、針助は苦笑すると、お加代に、
「――ほな、この子を頼んだぜ」
「いやよ」
 お加代が言った時は、しかし針助はもう娘を残して一人でスタスタと歩き出していた……。

「ちょっと、ちょっと、困るわよ。あたし……」
 兵古帯のお加代は針助のあとを、バタバタと追うて行って、
「――あんな子あたしに預けてどうするのさ。困るわよ。――ちょっと、針助さん!」
 呼びとめようとしたが、しかし、針助はふり向きもせず、鴈治郎横丁から姿を消してしまった。
 お加代は諦めて、唖娘の方へ戻って来た。
「…………」
 唖の娘は、もう自分はお加代について行くよりほかにないと、きめてしまったように、ちょぼんと薄暗がりの中に立って、お加代が自分の所へ戻って来るのを待っていた。
 そのいじらしい孤独な容子が、さすがにふっとお加代の胸を温めた。
 お加代はいきなり娘の肩に手を掛けて、
「御免ね。さっき撲ったりなんかして……」
 と、謝るように言うと、無論それは聴えなかった
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