な。一大事や」
亀吉は声をひそめた。そして、
「――困ったなア。ほんまにどこイ行きよってんやろなア。ひとがこない探しとるのに……」
と、ブツブツ口の中でひとりごとのように言っていた。
「ハナヤできいても分れしめへんか」
「うん。今、ハナヤへ行って来たばっかしや」
そう言いながら、亀吉はキョロキョロそのあたりを見廻していた。
「それより、大将、ついでやさかい、靴みがきまひょか。大将の靴ドロドロだっせ」
三郎がブラシを取り上げると、亀吉は、
「阿呆! 靴どころのさわぎか。兄貴を探すのにキリキリ舞いしてるんや。さア、ぼやぼやしてられん」
そわそわと行きかけたが、ふと戻って来ると、
「――お前ら、兄貴を見たら、おれが探してる、すぐハナヤか中之島の図書館イ行くように……。いや、中之島は行ったらいかん。ハナヤへ、ハバ、ハバ(早いとこ)行くように、おれが云うてたと、ことづけてくれ」
「オー・ケー」
亀吉は闇の中へ姿を消してしまった。
そのうしろ姿を見送りながら、次郎はぼそんと言った。
「なア、三郎《サブ》公、掏摸テ豪勢なもんやなア」
「うん」
と、三郎も相槌を打った。
「――いつでも
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