相変らず靴磨きの道具を前にして、鉛のようにさびしく、ちょぼんと坐っていた。
 昼間の場所は夜になると、真っ暗になるので商売も出来ない。
 だから、食堂の光がかすかに洩れて来る場所へ移ったが、さすがに夜は殆ど客は来なかった。
 それでも、じっと坐っていたのは、家にたった一人の肉親の母親が病気で臥ているからであろう。母親のことが気になって、一分でも早く家へ帰りたかったが、しかし、それよりも先立つのは、
「一円でも沢山持って帰ろう」
 という想いであった。
 食堂から洩れて来るのは、光だけではなかった。
 肉を焼いているのか、その香いがプンプン漂ようて来る。
「ああ、ええ香がしよる」
 三郎はちいさな鼻をピクピクさせて、
「――兄ちゃん、ハナヤのカツレツ美味かったなア」
「うん、オムレツも美味かったぜ」
 と、次郎も唾をのみこんだ。
「フズーズボンチも美味かったな」
 と、三郎、
「阿呆! フルーツポンチや。フズーズボンチとちがうわい」
 と、次郎は叱りつけたが、ふと、ためいきをついて、
「――しかし、珈琲も美味かったぜ」
「わいはあんなにがいもンより、エビフライの方がええ。――ああ、おなか
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