そんな怖い顔せんとくなはれ。その代り、売った金は返しまっさかい」
 そう言って、上衣のポケットに手を入れた途端、亀吉は、
「あッ!」
 と、真青になった。
 落したのか、掏られたのか、二千円の金はいつの間にかなくなっていたのだ。
「しもたッ。落した」
 亀吉が叫ぶと、
「いや、掏られたんだ。あの男だなア」
 小沢は今さき自分がつけていた男の顔をちらと想い出した。
「――掏摸が掏られるなんて、だらしがないぞ」
 しかし、亀吉はそれには答えず、しきりにポケットの中を探していると、一枚の紙片が出て来た。
 それには鉛筆の走り書きで――
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「今夜十時中之島公園、図書館の前で待つ」
                    隼
  豹吉へ
 二伸 亀吉の二千円は掏らせて貰った。
    悪く思うな!
[#ここで字下げ終わり]

    夜のポーズ

 落日の最後の明りが築港の海に消えてしまうと、やがて大阪に夜が来た。
 太陽の眩しい光に憧がれる人達が姿を消し、夜光虫の青白い光に憧がれる人間共が大阪の盛り場に蠢く時が来たのだ。
 難波の闇市場の片隅では――
 次郎、三郎の兄弟が
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