く、その鋭さは小沢にはふと意外だった。
「ええ、ちょっと……」
 こんどは本当に頭をかきながら、
「――たすけると思って、貸していただけませんか」
 道子は急に立ち上って、茶の間を出て行った。
 そして、奥の部屋で何やらヒソヒソ言っているらしかったが、やがて戻って来ると、
「折角ですけど……」
 お貸し出来ませんわと、悲しそうな表情を唇に見せながら、その唇をキッと噛んだ。

「どうして……」
 駄目ですか――という眼で、小沢はちらと道子の顔を見ると、道子はキッと唇を噛みながら暫く、あらぬ方を見つめていたが、やがて、
「著物差し押さえされました」
 本を読むような、表情のない声で言って、ふと、微笑むといつものえくぼが浮かんだ。
 しかし、そのえくぼには寂しい翳があった。
「えっ……? サシオサエ……?」
 咄嗟に、意味が判らなかった。
「執達吏が今うちへ来てるんです」
「ああそれで……」
 判った。
 さっき玄関で見た三足の男の靴は、サシオサエに来ているのだったかと、判ったが、
「――しかし、どうして……?」
 と、疑問は残った。
「兄が高利貸に借金したんです」
「へえ……? 伊部君が…
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